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腰痛ぎっくり腰

椎間板ヘルニアの捉え方

椎間板ヘルニアの捉え方

一般的に、腰部や臀部の痛み、あるいは下肢のしびれといった症状がある場合、椎間板ヘルニアが疑われます。画像診断により椎間板の突出が確認されると、これが痛みやしびれの原因とされ、最終的には手術による椎間板の摘出が選択されることもあります。

つまり、原因は「飛び出した椎間板」であり、その結果として腰や下肢に痛み・しびれの症状が現れる、というのが一般的な見解です。

ヘルニアの主な要因として「不良姿勢」が指摘されることもありますが、実際の医療現場では、姿勢そのものよりも突出した椎間板や髄核の処置に重きが置かれています。


当院での考え方とアプローチ

当院では、椎間板の突出自体よりも、その背景にある「不自然な姿勢」や「特徴的な動作(動きの癖)」に注目します。
個々の姿勢や動作の偏りが腰部に過剰な負担をかけ、結果として椎間板ヘルニアを引き起こすと考え、それらの分析と筋骨格系の修正を行うことを重視しています。

特に、椎間板ヘルニアを起こしやすい身体の特徴として、腰部や頸部の回旋運動(体のねじれ)に偏りが見られるケースが多くあります。
このようなねじれた動作や姿勢が続くと、椎間板に微細な外傷や捻転損傷を繰り返し与えることになります。その結果、椎間板内部の圧力が高まり、線維輪の損傷部から髄核が突出または脱出する――というメカニズムが考えられます。


施術の目的と方法

当院の施術は、髄核の突出や神経圧迫そのものに直接アプローチするのではなく、椎間板内の圧力が高まらない状態をつくることを目的としています。
この「圧力が高まりにくい環境」を整えることで、痛みやしびれの軽減が期待できます。

この圧力は、主に腰部周辺の筋肉の緊張状態によって左右されます。


わかりやすい例え:濡れたタオルを絞る

例えば、濡れたタオルを両手でねじると、水が染み出してきます。

この状態を身体に置き換えると、

  • タオル:脊柱(背骨)
  • 水:椎間板の髄核
  • 両手:腰部の筋肉

つまり、筋肉(両手)が脊柱(タオル)を絞ることで、椎間板(中の水=髄核)が押し出されてしまうと考えられます。
であれば、筋肉で絞らなければ、髄核は飛び出す必要がないということになります。

また、痛みやしびれの原因は、飛び出した髄核そのものよりも、「それを引き起こすほど筋肉が過剰に緊張している状態」にあると考えることもできます。

このような考え方は「筋筋膜性疼痛症候群(MPS)」として知られています。
実際に、神経の圧迫がなくても痛みやしびれは発生するという臨床例も多数存在します。


ヘルニアは「現象」であり、「結果」である

椎間板ヘルニアは、腰部周辺の過剰な筋緊張によって引き起こされる一つの現象です。
つまり、「ヘルニア」は原因ではなく、「結果として現れた状態」と捉えることができます。

痛みやしびれの本当の原因は、一部の筋肉が過緊張を起こし、それに付着する骨を引っ張ってしまい、結果的に骨の位置異常を生じさせているという見方が可能です。
そうであれば、修正すべきは椎間板や骨そのものではなく、過緊張を起こした筋肉を正常な緊張状態(テンション)に戻すことではないでしょうか。


過緊張への正しいアプローチ

姿勢や動作を分析することで、過緊張を起こしている筋肉を推定し、そこに対してアプローチしていきます。
その際に最も重要なのは、すでに緊張している筋肉をさらに緊張させないことです。

押す・揉む・強く引っ張るといった物理的な刺激は、筋肉にとっては「防御反応」を引き起こし、かえって症状を悪化させることがあります。
たとえば「マッサージ後に痛みが強くなる」「牽引治療後に立てなくなる」といったケースがこれにあたります。


力を加えるのではなく、「力を抜く」整体

緊張を和らげるためには、力を加えるのではなく、力を抜く方向の働きかけが必要です。

当院の「柔らか整体」では、術者が力で操作するのではなく、術者自身の合理的な動きを患者の身体に伝えることで、患者の身体が自発的に動きを再生し、過剰な緊張が自然と抜けていくよう導いていきます。
その結果、身体が本来あるべきバランスを取り戻し、過緊張していた筋肉も、その人にとって適切なテンションに整っていきます。


筋・筋膜性疼痛症候群研究会名誉会長Dr加茂淳先生

筋骨格系の痛みやしびれのほとんどは筋性疼痛(攣り、引っ張り、こわばり、凝り、痙攣、攣縮、スパズム)です。筋肉の微小損傷が始まりです。
不意の外傷、過度な労働やスポーツ、姿勢や生活習慣が原因となります。
MPS(筋筋膜性疼痛症候群)やトリガーポイントという言葉はネットを通して広がりつつあります。整形外科やペインクリニックで扱うほとんどの疾患はMPSなのです。それが間違った診断をされていることが多いのです。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が痛みやしびれの原因になることはありません。これらは痛みやしびれの原因ではなくて結果とみるべきなのです。

整形外科医 加茂淳先生


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